2020/04/29 10:15

■グリシンって何?


グリシンはアミノ酸の一種です。アミノ酸とは食べ物から得られるタンパク質が分解されたもので、筋肉を構成したりしています。生体内ではセリンという物質より生成されています。グリシンは体の中で、ポルフィリン、プリン、クレアチン、グルタチオンという成分に作り替えられます。そのため、一般的には「記憶に良い」「睡眠によい」と言われています。ヒトでの有効性については統合失調症や脳卒中に対して有効性があるのではないかとも言われています。安全性については適切に飲むことで安全に飲めると考えられていますが、妊娠中の方や授乳中の方については十分なデータがありません。期待されているためか様々なサプリメントが日本でも発売されています。

 



■成分と特性


グリシンはタンパク質を分解してできるアミノ酸の一種であり、体の中ではセリンという物質から合成されています。このグリシンは、ポルフィリン、プリン、クレアチン、グルタチオンという成分に作り替えられます。これらの物質の効果で、統合失調症、脳卒中に対し有効性があると言われています。

国内の制度では、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」とされており、こういう効果がありますよと言わなければサプリメントの扱いになりますが、効果がありますというと薬になってしまうようです。その分効き目もあるのではないかと考えます。

体の中では様々な物質の原料となるため、様々な効果が期待されています。

グリシンの構造も複雑ではなく、測定する方法がしっかりとわかっているようなので、得体のしれないようなものではないです。

 



■安全性


元々体を構成している成分であるため、比較的安心して使用することができます。

適切な使用方法を守れば安全であることも示されているため、サプリメントの中でも特に安心して使用できるでしょう。また、連続で5年まで飲んでいても安全であるというデータもしっかりとあります。何か体に影響があるとすれば、吐き気や下痢、少し眠くなるなどの可能性がありますが、飲むのを止めることですぐに改善すると考えられます。元々体の中の構成成分であるため、アレルギーの可能性は低いと思います。

大人でのデータはしっかりしています、子供における安全性のデータは十分ではないため、お子様が飲む際には注意が必要です。妊娠している方や授乳中の方にはデータがないため、飲むことは避けた方が良いと考えます。

 

 

薬との相互作用に関しては、クロザピンという精神疾患の薬との併用で病状が悪化したというものがあります。どのような理由で病状悪化が起こったわけではないため、クロザピンだけではなく、精神疾患の薬全般とは飲み合わせが悪いと思っておいた方が良いと思います。

 



■効果


グリシンによる効果は睡眠の質が上がる記憶に良い統合失調症に良い脳梗塞に良いなどが言われています。それらについて細かく記載してみました。

 

睡眠の質が上がる

人間は体の中にそれぞれ時計を持っていて、その時計を基準に眠くなったり、朝になったら目が覚めるというようなリズムを刻んでいます。グリシンは体の中で脳に働き、体内時計中枢と呼ばれる視交叉上核という部分に働きます。

実際に健康で睡眠の質に問題を抱えていない人にグリシンを飲んでもらうことで、睡眠の質が向上したり、仕事の効率が改善したというような研究結果もあるようです。

 

記憶に良い

睡眠をしっかりとることで記憶が定着すると言われています。特に体で覚えるような手続き記憶と呼ばれる記憶が睡眠で定着するようです。

実際にマウスでの実験になりますが、グリシンが頭の中にたくさん存在するようにしたマウスでは、空間記憶能力が向上していたと言われています。

 

統合失調症に良い

普段の薬による治療と一緒にグリシンを飲むことで、意欲の低下や気分の落ち込みを改善すると言われています。

統合失調症の入院患者さん11人を対象に、偽薬(一般的にプラセボと呼ばれる)を飲む人とグリシンを飲む人を分けて行われました。6週間飲み続けたところ、意欲の低下や気分の落ち込みが改善されたという報告があります。

 

脳梗塞に良い

症状が発生してから6時間以内にグリシンを飲むことで、脳梗塞によるダメージを少なくすると言われています。実際に脳梗塞が発症した後に飲むことはできないため、予防になるかもしれない程度に理解して飲むことが良いかもしれません。

 

 

効果については睡眠の質が改善するという研究結果も多くありました。睡眠の質が下がったりですとか記憶が低下するなどの、効果がマイナスに出るという報告は見つかりませんでした。

 



■論文等の研究情報


グリシンによる睡眠が改善する その1

健康で睡眠に特に問題を感じていない10名の男性を被験者として,普段の平日に床にいる時間(平均7.3時間)25% の睡眠制限(平均5.5時間) を連続3日間行った際のグリシンの睡眠に対する効果を見てみた報告では、疲労度が改善し、仕事効率が改善したという報告があります。

 

グリシンによる睡眠が改善する その2

睡眠に不満を感じていて軽度の睡眠障害がある男女11名を対象に行った研究では、睡眠の状態を確認するポリソムのグラフィーという検査で睡眠の質が改善していることが示され、実際に飲んだ人の感想でも睡眠の質が改善したという報告がありました。

 

グリシンによる睡眠が改善する その3

日本人でのデータですが、女性15人を対象に偽薬(一般的にプラセボと呼ばれる)を飲む人とグリシンを飲む人に分けた試験では、4日間グリシンを飲むだけで睡眠の質が改善したという報告もあります。

 

統合失調症の症状を改善する可能性がある

統合失調症の入院患者さんを対象に、偽薬(一般的にプラセボと呼ばれる)を飲む人とグリシンを飲む人に分けた試験では、パーキンソン病治療の薬を併用しながらですが、6週間飲み続けることにより、意欲の低下や気分の低下、認知機能が改善したという報告があります。

 

 

参考情報

Natural Medicines

「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について)

睡眠改善食品 ファルマシア Vol. 52 No. 6 2016 p530

薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)127 2006 p279